Chapter 3.4 糖尿病について
糖尿病とは血液の中の糖(血糖)が多すぎる状態が持続することです。
未治療で放置すると腎臓が損傷され、尿中に糖が出てきます。
このことから“糖尿病”と言われています。I型とⅡ型があります。
Ⅰ型はウイルス感染などが原因で膵臓が機能を失いインスリンが全く分泌されない
Ⅱ型はインスリンは分泌されるが不足又は機能が十分でなく高血糖が持続する
診断基準
空腹時血糖値 : 126mg/dl 以上 食後2時間血糖値 200 mg/dl以上
HbA1c 6.5%以上 (75歳以上の治療目標 7.5%以下)
血糖値は食事をとると上昇し徐々に下がっていきます。(採血のタイミングが影響)
HbA1C は過去1,2か月の平均血糖値を反映するので採血時間の影響を受けにくい。
EndFragment
糖尿病を放置すると血管が詰まったり、バイ菌に弱くなったりします。
高血糖はコレステロールや高血圧と同じように動脈硬化の原因となります。
特に網膜の病変は血液検査などでは発見で
高血糖に伴う動脈硬化の特徴は細い血管も傷みやすいことです。
網膜や、腎臓、神経の周りの細い血管などが詰まりやすくなります。
長時間高血糖が持続することでインスリンの分泌が常時必要になり、血管の損傷もすすみます。
血糖値が高くなればなるほどインスリンを多く分泌するように膵臓が刺激されます。
血糖値は食後2時間後くらいが最も高くなるといわれています。
この時にもっとも大量のインスリンが必要とされ、膵臓に負担がかかります。
膵臓を休めるには血糖値が高くない状態が必要なので間食はやめた方がよいと考えられます。
血糖について考える場合“インスリン”について知っておく必要があります。
血糖値の変動にはほぼ全てにインスリンが関与しています。
1. インスリンについて
・インスリンは膵臓から分泌され、血糖を筋肉や脳、肝臓の細胞に取り込ませる働きがあります。
・高血糖状態が長期間続くと膵臓が疲れてインスリンが分泌できなくなります。
Point!
“糖尿病とはインスリンが不足しているか、うまく働かない状態”
2.高血糖になる理由
① インスリンの量が不足する
② インスリンが十分働かない
3.血糖値を下げるには
① 糖分の摂取をひかえる。糖を消費するようにする。
→ 食事制限、運動する、筋肉量を増やす。
② インスリンの量を増やす
→ 膵臓を刺激してインスリンの分泌を増やす。
膵臓が機能しなくなったらインスリン注射
③ インスリンが働きやすい環境にする(抵抗性の改善)
→ 内臓脂肪を減らす。歯周病などの全身の疾患を治療する。
4. インスリン抵抗性(うまく働かない)
・肝臓や筋肉、脂肪細胞などでインスリンが正常に働かなくなった状態
・肝臓や筋肉などの組織が血液中の糖を取り込まない。
・インスリンの働きを妨げる物質が体内で増えることが原因。
(歯周病等の慢性感染症や肥満その他の生活習慣病が悪影響を与える)
5. 糖尿病の治療
“膵臓に負担をかけすぎないようにしながら適切な血糖値を保つ” ことが目標。
・摂取する糖を減らす。(食事)
・食後血糖が高くなりすぎると短時間に大量にインスリンが必要となるので膵臓の負担大。
→糖の吸収を穏やかにするため、食物繊維をとるようにする。
・糖を消費するように運動する。(運動)
・インスリンが働きやすいように肥満や体質を改善する。(抵抗性を改善する)
・血糖に合わせてインスリンが分泌されるように膵臓を刺激する。(投薬治療)
6.治療薬(主に内服治療薬について)
・糖尿病には様々な作用の治療薬があります。
・治療の際に最も注意する必要があるのは“低血糖発作”です。
・高血糖は短期間であれば問題ないのですが、低血糖は生命にかかわります。
・薬を選択する際は低血糖をおこしにくい薬を選択する方が安全です。
・効果をあげるためには強い薬が必要となることがあります。
・これらを単独で又は組み合わせて使用します。
①DPP-4阻害薬 (マリゼブ、ジャヌビア、トラゼンタなど)
・栄養素が消化管に入った時のみインスリンの分泌を増やす。
・低血糖は起こりにくい。
・安全性は最も高いと考えられる。
②ビグアナイド薬 (メトホルミンなど)
・インスリンに対する反応を良くする、消化管からの糖の吸収を抑える作用。
・主に肥満の患者さんに使います。
・脱水や大量飲酒に注意が必要
・発熱時や脱水傾向の時は休薬する必要がある。
・インスリン分泌に影響を与えないため、低血糖が起こりにくい。
③SGLT2阻害薬(フォシーガ、スーグラなど)
・腎臓でのブドウ糖の再吸収を抑える。
・体内に戻る糖の量を減らし、尿中への糖排泄を促進します。
・頻尿や脱水などには注意が必要です。
④α-グルコシダーゼ阻害薬 (ベイスン、セイブルなど)
・腸での糖の吸収を遅らせる。
・インスリン分泌に影響しないため、低血糖を起こすことはほとんどありません
・お腹が張る、ガスが増えるという副作用がみられることがあります。
⑤チアゾリジン薬(アクトス)
・インスリン抵抗性を改善する
・浮腫に注意。体重が増加しやすい。
・膀胱癌のリスクが高まる可能性がある。
⑤SU薬 (アマリール、オイグルコンなど)
・膵臓に働いてインスリンの分泌量を増やす。
・膵臓の機能が弱って、インスリン分泌が十分ではない患者さんに使用。
・食事と関係なくインスリンの分泌を増やすため、空腹時に低血糖を起こすことがあります。
⑥速効型インスリン分泌促進薬(グルファスト、スターシスなど)
・インスリンの分泌量を増やす薬です。
・発病して間もない糖尿病患者さんにみられる食後の高血糖を治療するために使います。
・効く時間が短いので、指示通りに服用していれば低血糖は起こりにくい。
・飲んですぐに食事をしないと低血糖が起こることがあります。
⑦インスリン抵抗性改善薬 (アクトスなど)
・肥満などによって肝臓や筋肉のインスリンに対する反応が悪くなった患者さんに使います。
・低血糖は起こりにくい。
膵臓が疲弊してインスリンを十分に分泌できなくなると、注射でインスリンを直接投与しなければならなくなります。
動脈硬化を防ぎ膵臓に負担をかけないように早期からの血糖コントロールを行うことが望まれます。